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中国ビジネスには意匠権!

近年、国内の製造業は、人件費の安い中国など海外に生産をシフトするようになってきました。 この傾向は大企業だけでなく、中小の製造業においても増えつつあります。
   一方で、人口が多く、富裕層の数も増えてきた中国は巨大な消費地域でもあり、中国で認められる商材を提供できれば、その売り上げ規模は日本国内のみでの売上を遥かに凌ぐものとなります。
   そんな魅力を持つ中国ビジネスですが、その反面、日本国内の常識では測れないリスクもまた存在します。 このリスク回避の手段としては、日本と中国両方での意匠権取得が有効です。 ここでは、中国ビジネスでは、日本と中国両方での意匠権取得がなぜ必要かをリスクマネジメントの観点と、特許権の取得との比較の観点から見ていきたいと思います。

1.中国ビジネスでのリスクマネジメントとしての意匠権

なぜ?自社製品がいきなり意匠権侵害品に!?

輸入模倣品には中国内での対応と水際取締りで万全対策を!

2.中国では特許権より意匠権

中国国内で利用されている意匠権

見た目そっくり,性能イマイチな模倣品には意匠権!

争い不要,見た目一発で侵害品確定!

翻訳量少なく安価な権利

各トピックスの説明を以下に記載しています。各トピックスをクリックすると、その制度の説明欄にジャンプします。

1.中国ビジネスでのリスクマネジメントとしての意匠権

なぜ?自社製品がいきなり意匠権侵害品に!?

これは実際の事例で説明しましょう。 日本企業A社は、商社の紹介で知った中国企業のB社に、自社が製品デザインも含めて企画した商品を製造委託していました。 A社B社の関係はしばらくの間うまくいってたのですが、ある日、B社から納品価格値上げ要求と、値上げに応じない場合は製品の供給をストップするという連絡を受けました。 最終製品の値上げは難しい状況で、B社からの値上げに応じてしまうと利益がほとんどなくなってしまうため、A社は製造委託先をB社から中国企業のC社に変更することにしました。
中国意匠の無審査主義    すると、B社から、C社の製造する製品は、B社の意匠権を侵害するので、日本への輸出を差し止めるという警告を受けてしまったのです。 どうしてこのようなことになったのでしょう?

実は中国の意匠法は無審査登録主義を採用しており、意匠出願は書類上の体裁さえ整っていれば、そのデザインが新しく創作されたものかどうかの審査をすることなく登録されてしまうのです。
   もちろん、製品の意匠権を受けることのできる権利は、本来、製品デザインを企画したA社にあるので、B社の意匠権は、無効になるべきものです。 しかしB社の意匠権を無効にするには、中国の特許庁に対してB社の意匠権を無効にする審判を請求しなければなりません。

結局A社は、B社の意匠権を無効にするための審判費用が高額になってしまうため、その製品の販売を終了することにしました。 中国で製造することで、製造コストを抑えようとしたのが裏目に出てしまった事例です。

このケースで、もしA社が自社の企画製品について中国で意匠権を取っていたらどうなるでしょう?
   さきほど説明したとおり、中国の意匠法は無審査登録主義を採用しているので、その場合でもB社が意匠権を取ることはできます。 しかし、A社は、先の同じデザイン内容で、かつB社よりも先の出願日の意匠権を持っています。 同じデザイン内容の意匠権の場合、出願日が先の意匠権のほうが有効です。 つまり、B社の意匠権は、すぐに無効な権利だということが分かってしまいます。
   したがって、B社が意匠権をかざして警告をしてきても、それはいいがかりであることが明白なので、B社はそれ以上何も言えません。

また侵害訴訟になった場合に、中国での意匠登録が2009年10月1日以降の意匠登録であれば、裁判の場で中国特許庁に対して意匠権評価報告の作成を請求することができます。
   A社が先に意匠登録していれば、B社の意匠登録が無効なものであるという評価報告を受けることになるでしょう。

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輸入模倣品には中国内での対応と水際取締りで万全対策を!

中国でデザイン模倣品(デットコピー品)が製造され、これが日本に輸入されてきた場合を考えてみましょう。
   このケースでは、まず(1) 中国国内の模倣品の製造元の製造をおさえたいところです。 製造元は中国にあるため、製造元おさえるには中国で意匠権を取得して、中国の行政府に侵害品の取締りを依頼するか、裁判所に侵害訴訟を提起することになります。 中国模倣品対策 しかし中国での対応策は、日本企業の立場から見ると、外国のに対して手続になるため、費用や時間がかかってしまうという問題もあります。
   そこで、次なる対応策として、(2) 模倣品を関税で取締って、日本国内に流通させないことが考えられます。 こちらは、日本の意匠権が役に立ちます。税関に模倣品が意匠権侵害しているものであることを申し立てておけば、その模倣品は取締りの対象になります(水際取締り)。
   さらに、関税の目をかいくぐって日本国内に入ってきた場合でも、日本国で意匠権を取得しておけば、(3) 日本国内の模倣品の販売店に対して販売差止の訴えをすることができます。

このように、中国,日本の両国で意匠権を取得しておくと、二重,三重の保護を受けることができ、模倣品被害を最小限に食い止めることができます。

税関による水際取締りの詳細については、財務省関税局税関の「税関による知的財産取締り」をご覧ください。

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2.中国では特許権より意匠権

中国ビジネスで最も保護する必要がある知的財産権は、ブランドを保護する「商標権」です。 では、その次に保護の必要がある知的財産権は?と聞くと、多くの人から、技術を保護する「特許権」という回答が返ってきます。 しかし実はデザインを保護する「意匠権」を考えたほうがよいケースが多いようです。

なぜ中国では特許権より意匠権なのか?その理由について見ていきたいと思います。

中国国内で利用されている意匠権

中国国内では、日本国内で考えているよりも意匠権の利用割合が高いです。 2010年のデータで、日本国内の特許出願件数は 344,598 件、意匠出願件数は 31,756 件で、特許出願1件あたりの意匠出願件数は約 0.9 件と10分の1にも達しません。 一方、中国国内(2010年)では、特許出願件数は 391,177 件、意匠出願件数は 421,273 件で、特許出願1件あたりの意匠出願件数は、約 1.07 件に達します。 これが中国人の出願件数に限るとその割合は約 1.4 件まで増加します。
   このことは、中国での権利保護は、意匠権の取得が有効であり、中国人自身はそのことを良く分かっていることを示しています。 そうであれば、中国ビジネスを考える日本人も、日本国内での特許重視の方針を見直して、意匠権をより重視する中国国内のやり方を身につけることが重要であるといえそうです。

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見た目そっくり,性能イマイチな模倣品には意匠権!

中国の模倣品」という場合、どのような模倣が思い浮かぶでしょうか?。 多くの人は、まず紛らわしい製品名(「sony」⇒「somy」,「HONDA」⇒「HONGDA」など)を思い浮かべると思います。 これは「商標権」で対応しなければいけない問題です。
   次に思い浮かべるのが「見た目がそっくりだけど、性能がイマイチ」という模倣ではないでしょうか。 「性能がイマイチ」の場合、使われている技術のまねはしていない(できていない)ことが多いので、このような模倣は「特許権」での対策ができません。 ここで「見た目そっくり」は、デッドコピー品といわれるものであり、デザインを保護する「意匠権」の出番です。 このように、中国の模倣品の対策には、商標権に次いで、意匠権が有効であることが多いです。

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争い不要,見た目一発で侵害品確定!

特許権の場合、その権利範囲がどこまでなのかは文章で記述します。 このため、権利範囲の示す文章の解釈によって、本当に侵害製品かどうかが争われることになります。 よって、多くの特許権侵害事件では、すぐに解決できるケースはごくわずかです。 一方、意匠権のデザイン面の権利範囲は図面などで表わされるので、模倣品がデッドコピー(全くそのままのデザイン)の場合では、見ただけですぐに意匠侵害品と分かり、素早い解決が可能です。

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翻訳量少なく安価な権利

中国で特許権や意匠権を取得しようとすると、その書類は中国語で作成しなければなりません。 日本から中国に特許出願や意匠出願するとき、たいていは日本の特許庁に提出した出願書類があるので、中国への出願書類はこれを中国語に翻訳することになります。 ここで、特許権は、発明の内容を文章で記述したものなので、その翻訳料金もバカになりません。 また「誤訳」の問題も避けて通れません。 一方、意匠出願の書類のメインは図面(または写真など)なので、翻訳料金が安く済むとともに、「誤訳」の心配も無用です。

これらの点からも、中国ビジネスにおいては、特許権よりも意匠権の取得に力を入れたほうがよいといえそうです。

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最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。

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